ビーオースタジオビジネス対談では、様々な業界からゲストをお招きし、各業界についてのお話やご自身の経験からビジネスに関するメッセージをいただく企画です。
リーダーの条件
管理・監督だけがリーダーの仕事ではない
[川添]
この本には組織マネジメントやイノベーション、「組織を良くする」ということのエッセンスが書かれていますが、最初に気になったのは「監督責任」についての考え方です。マネジャークラスの自分の職責、職域に関する考え方が、どうも日本とは違っているぞ、ということです。
この「監督責任」の違いとは、どういったところにあるのでしょうか。
[福井氏]
それは、組織とは何のためにあるのか、ということです。つまり「組織とは一定の目的のために、個人が作り出したものだ」と考えますと、組織には目的があるはずです。組織の管理は、その目的に沿って行われることになります。 ところが日本の場合、そもそも組織が何のために作られるのかというところから、多少あいまいな部分があります。それで結局、組織の管理者の責任があいまいになるんですね。
私は独自に「一般監督責任」という言葉を使いますが、組織の職員の個人的な過失、例えば飲酒運転ですとか、個人的に社会的な不祥事を起こすと本人は当然、法律で罰せられる。しかし、一般的な日本の傾向だと、組織の管理者が「誠に申し訳ありませんでした」と謝ったりするケースが結構多いですね。
こういったことは、日本の組織は目的が非常にあいまいで、組織の管理者のやるべきこともあいまいであるという一例として挙げられるのではないかと思います。「職員のことを考えているのだからいいじゃないか」と受け止められる向きもあるとは思いますけれども、逆に考えますと、あいまいな責任があって、あいまいな解決で終わってしまう。

私はここが非常に問題だと感じているんですね。「誠にすみませんでした、二度とこういったことを起こさないように気をつけます」、とトップが謝る。我々日本人はそれで納得してしまいますが、結局それで何が解決したのか、前進したのか、どういう改革が行われたのか、誰がどういう責任を取ったのか、というところが不明確のまま終わってしまう。
もしかすると、そういう事件が改革の一つのチャンスだったかもしれないでしょう。組織のシステムに何か問題があった可能性もある。改革の一つのチャンスがそのまま失われて、システムの改善、改革に結びついていかない。懺悔と言いますか、みんなが謝って、忘れて、次に進んでいく、という繰り返しになるんじゃないかという気がします。そういうところで少し考え方を変えてみると、組織としての進歩が可能になるのではないか、というのが私の問題意識なんですけれども。
[川添]
そうしますと、「監督責任」という場合に、リーダーがどこまで自分の責任とするか、ここまでが自分の責任の範囲ですよ、ときっちり決めていくことで、恐らくリーダーシップのあり方も変わってくると思うんですね。監督することと、リーダーシップというのは、ずいぶん密接に繋がっていると思いますが、リーダーシップをどのようにお考えですか。
[福井氏]
リーダーシップの問題はいろいろな面から議論しなくてはなりませんが、おっしゃるように、監督責任という意味でのリーダーシップもあります。ただ、物事をきちんと進める、管理・監督というのは、マネジメントをやっていくということですよね。しかし、リーダーシップとなると、また少し違った観点が必要かなと思います。
リーダーとは結局、「現状に不満を持っている人」、これです。現状維持ではなく、むしろ不満を作り出していく。例えば、「現在の世界銀行では、いずれ国際社会で大きな役割を果たせなくなってしまう」と考えることです。今、資金は潤沢にありますから、資金を供給するといっても、世界銀行の地位はそんなに大きくはならない。このままで良いんだろうか、世界銀行は知識銀行に変わってゆくべきではなかろうかと。リーダーとは「このままでは、あなた方はマイナーなプレーヤーに落ちてしまいますよ」と、職員の間に不満を作り出してゆく人ではないかと思います。
[川添]
組織を活性化させる要素も入ってきますね。
[福井氏]
そうですね。組織というのは、どうしても沈滞していきますから、いかに活性化していくか。その時に「現状では満足できない」、これは処遇や給与が不満だというのではなくて、社会的な立場や役割というものも含めて、「現状では満足できない」というものを作り出してゆくのがリーダーシップですね。
冒頭申し上げたように、私が世界銀行にいた当時、総裁が変わりました。この総裁は「自分は現在の世界銀行に満足できない」「改革を進めなければならない」というビジョンをはっきり持っていました。リーダーとは、ああいう人のことだと思いましたね。
コンサルタントには回答を求めない
効果的なコンサルタントの活用法
[川添]
この本を拝読して大変面白かったのが、コンサルタントのところです。コンサルタントの使い方がとても特徴的に見えました。日本の組織でコンサルタントを使うケースと、世界銀行でコンサルタントを使うケースとで、そもそもの終着点が違っている気がしたのですが、その点について伺えますか。
[福井氏]
コンサルタントは、世界銀行の改革に非常に重要な役割を果たしました。もう少し一般的に申し上げると、これからの日本ではコンサルタントの役割が増えていくだろうと思います。そして、重要になってくる。日本人はどちらかというと、技術的なコンサルタントは得意ですね。技術コンサルは伝統もありますし。しかし、組織とかマネジメントといったコンサルタントは、日本ではまだ充分に発展していませんし、これからどんどん重要になってくるのではないかと思います。ただ、私の経験から申しますと、日本ではコンサルタントの受け止め方、あるいは使い方が、まだ少し未熟なところがあるのではないかという感じがします。
日本ではよく大会社や大きな銀行などが、「大手コンサルティングファームのコンサルタントを入れました」などと言いますね。そういう方の話を聞きますと、大体のアプローチは「コンサルタントを入れて、どんな診断書を書いていただけるか興味をもっておりました」と。「ところが出てきた診断書は役立ちませんでした」、という含みがあるわけですが、そういう人が非常に多い。 「どうしたらいいのでしょうか」というコンサルティングもありますが、私は、「わが社の経営方針如何(いかん)」とコンサルタントに診断書を求めるのは、本当のコンサルタントの使い方とは違うのではないかという気がしますね。コンサルタントは基本的に、「イエスという答えを書け」と言えば書きますし、ヌエのような存在です。だから私は、コンサルタントに「回答を書いてもらう」というアプローチは間違いだと思うんです。
コンサルタントの役回りは、議論を喚起していく、ディスカッションを活発にさせていく、偏見や社長の「ご意向」が入らない自由な議論を活発化させていく、そういうものではないかと考えます。 世界銀行の時も大手コンサルティングファームからコンサルが入りましたが、コンサルに「どうしますか」と聞くのではないんですね。コンサルが入ることによって、今まで言いにくかったことを自由に言える、総裁と意見が違うこともコンサルになら言える。それで議論が非常に活発になった。後から振り返って考えてみると、総裁もそれを狙ったのではないかと思うんですよ。
[川添]

そもそも、そういう目的でコンサルタントに来てもらった、と。
[福井氏]
コンサルタントの書いたレポートを、みんなに配って読んでもらおう、というのではなくてね。 コンサルが入ることで、議論が深く、広く、活発になりました。私は、ここにコンサルタントの効用があるのではないかと思います。技術系に多いソリューション型のコンサルもありますから、それを決して否定はしません。ですが、もう少し視野を広げて、議論を活発化するために必要なものだというふうに捉えると、またコンサルの使い方も変わってくるのではないか、と。
[川添]
福井さんがおっしゃられたコンサルタントは、第三者的な使い方をするものであって、答えを持っている、もしくは答えを考えるのは、あくまでもその組織である、ということですね。組織の中の意見をいかに整備し、答えを導き出せるように活性化するようなスパイス的な役回りが、コンサルタントであると。
[福井氏]
国際機関にはいろいろな国の人間がいますから、コンセンサスも右から左にそう簡単にはできない。まさにそういう要素があったからこそ、コンサルが入って、議論をして、その中でベストプラクティスを探していくという作業が必要だったし、また可能だったんですね。そういった作業のためには、やはりコンサルタントが入らなければならない。今のようにコンサルが活躍していくのは、そのような文化的な、あるいは歴史的な違いというのはあると思います。ですから、海外ではコンサルを入れたほうがいいということになる。
その点、日本では必ずしも民族的に違う考えを持っているというわけではなく、コンサルの使い方も難しいと思うんです。しかし、これからは日本でも学卒で、新入社員で、子飼いを育て上げて、同じような考え方を持った人たちが集まっている会社にはなかなかならない。社員にも経営者にも外国人が来るかもしれませんしね。そういうふうに日本もだんだん多様化してくると、やはりコンサルの重要性が改めて認識されてくると思います。今はそういう変化の途上ですが、変化に対応していくという意味で、コンサルの使い勝手もまた出てきますしね。
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