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【導入事例】スクラッチ開発で実現した“学習する”AIチャットボット

行政サービスのデジタル化が進む中、多くの自治体が住民対応の効率化を目的にチャットボットを導入しています。しかし、応答精度に欠けていることや対話の不自然さから、実運用には課題が残っていました。そうした中、ある自治体ではゼロから開発したAIチャットボットを導入しました。独自の学習フローとコンテンツ連携により、チャットボットが自治体特有の情報を継続的に学習・更新できる仕組みを構築したことで、職員の負担軽減と住民満足度の向上という両立を実現。本事例では、導入の背景からビー・オー・スタジオのアプローチ、導入後の効果までを紹介します。

AIソリューション

ある自治体では、住民(以下、区民)からの問い合わせへの迅速な対応と業務効率化を目的に、数年前からウェブサイト上にチャットボットを設置していました。窓口や電話による対応に加え、24時間アクセス可能なチャットボットを常設することで、区民にとって利便性の高いサービス提供を目指していましたが、現実は想定通りにはいきませんでした。

「間違った回答をする」「対話が不自然」「電話した方が早い」、そして決定的だったのは、利用者からの「使えない」というフィードバックでした。このままでは住民サービスの改善どころか、信頼性を損ねる事態を招きかねません。
自治体は、従来のパッケージ製品や既成のAIチャットサービスではなく、ゼロから開発するという方針に舵を切りました。

“本当に使える”チャットボットを

このプロジェクトのパートナーにはAIと自然言語処理技術に強みを持つビー・オー・スタジオが選ばれました。ビー・オー・スタジオはウェブサービス全般において課題解決力の高さが評価されています。加えて過去にAIチャットボットの導入実績があり、今回のスクラッチでの開発にも柔軟に対応できる体制を整えていたことが、大きな選定理由となりました。

特に注目されたのは、ビー・オー・スタジオが提案する独自のAI学習フローと、最新の大規模言語モデル(LLM)を活用した応答エンジンの存在です。
参考までに2025年6月現在のAIチャットボットの主なタイプは以下となります。

タイプ特長弱点
インテント分類型入力したテキストから「意図(インテント)」を分類、対応した定型回答を返す想定外の質問には弱い。学習データが古いと誤認識しやすい
チャットフロー型事前に設計されたフローチャート(会話シナリオ)に沿って対話する柔軟性がなく、逸脱した質問には対応できない
RAG型
(Retrieval強化生成)
外部ナレッジベースやドキュメントを検索(Retrieval)し、その情報を元に答えを生成(Generation)する検索精度・文書構造に依存しやすい。システム構成が複雑になりやすい
ハイブリッド型上記の複数の方式(例:インテント型+RAG型)を組み合わせて柔軟に対話を制御する設計・運用コストがかかる。メンテナンスが複雑化することも
エージェント型AIが「自ら考えて行動する」能力を持つ。APIや外部アプリと連携可能。実行結果に応じた会話が可能安全性・誤動作への対策が必須。(業務導入の際には慎重な検討が必要)
音声対話型音声でユーザーとのやり取り【STT(音声→テキスト)+TTS(テキスト→音声)】を行うチャットボット。高齢者・視覚障がい者などに有効雑音や方言に弱いことがある。また文脈理解力が重要
マルチモーダル型テキストだけでなく、画像・動画・音声・ファイルなど複数のモダリティ(情報形式)を理解するチャットボット。高度なAI・処理リソースが必要。UX設計が複雑になりやすい

ビー・オー・スタジオは、既存のFAQベースのチャットボットの限界を踏まえ、以下の新しいアプローチを提案しました。

学習処理フローシステム図

1. LLMによる自然な応答生成

これまで自治体で導入してきたチャットボットのように、登録済みのQ&Aから回答を引き出すのではなく、大規模言語モデル(LLM)を用いて、問い合わせに対してAIが文脈を理解し、自然な文章で回答を生成する仕組みの構築。これにより、より柔軟で人間らしい対話が可能になります。

2. “学習するチャットボット”への転換

FAQの登録作業やチューニングに膨大な時間を割いていた過去の課題と利用者からのフィードバックを踏まえ、ビー・オー・スタジオは、チャットボットが自ら学習・改善できる仕組みを実装。具体的には以下の工夫です。

  • チャットボットの管理画面から学習用コンテンツの編集、CSVファイルや画像のアップロードを可能とする
    –職員自身がウェブサイトの更新にあわせて、AIチャット側の情報の追加・修正が柔軟に行える。
  • サイト内を任意に指定した頻度で自動クローリング
    –新たに追加されたFAQやお知らせ情報をAIチャットボットが定期的に収集し、チャットに反映
  • AIが過去の対話ログを分析し、改善ポイントを自動抽出
    –誤解が生じやすい内容や曖昧な質問にも対応できるよう都度改善

3. 区民の“言葉の使い方”を考慮した設計

運用開始後の今も、区民が日常的に使う言葉や表現、曖昧な質問にも対応できるよう、問い合わせ文をそのまま正確に理解できるようにチューニングを重ねています。たとえば「保育園の申し込み いつまで?」「ゴミの分別ってどう?」といった、形式に沿わない自然言語の質問にも応答します。

さらに区のLINE公式アカウントと連携させ、LINE上でチャットボットが動作、LINE のUserIDに紐づくコミュニケーションが取れるような機能も有しています。デザインについてはウェブサイトにあわせたトーン&マナーとスタイルを施しました。

渋谷区役所ウェブサイト上のAIチャットボットの常駐

導入後の成果と今後の課題

従来のチャットボットが抱えていた誤回答や不自然な応答はほぼ解消されています。SNSのポストでも概ね好意的に受け止められているようです。

AIチャットボットは今、進化の岐路に立っています。単なるFAQ自動化ツールではなく、「学習し続ける対話パートナー」として、ユーザーの多様な言葉を理解し、適切に応答する存在へと変わりつつあります。

公共サービスや行政分野においては、透明性・説明責任・アクセシビリティといった観点を満たしつつ、あらゆる住民にとって「信頼できる窓口」となることが期待されています。
AIチャットボットは、単なる効率化ツールから、人と行政、企業と顧客をつなぐ”対話のインフラ”として、その役割を広げていく必要があります。

知っておきたい生成AIで出力されたコンテンツの著作権について

最後に、生成AIを利用するにあたり、著作権について知っておきたいことをお伝えします。
学習時の利用について、日本では、著作権法第30条の4により「情報解析(=学習目的)」での著作物利用は原則可能です。ただし、権利者の正当な利益を不当に害する場合は除外される可能性があり、商用モデルではこの点が問われやすいので留意しておきましょう。

そして生成されたコンテンツについては、著作物に酷似したアウトプットである場合、著作権侵害とみなされることがあります。
「学習目的なら自由に使える」とは容易に言えません。生成AIの特性(出力物との関係)によって、著作権上のリスクはむしろ大きくなる可能性があることを理解した上で、ビジネスに活用していきましょう。

参考サイト:

SNS解析ツールNapoleonCat

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